食品会社や飲食関係の業種では自社や他社の食品の内容を分析して、新製品の開発や品質管理に役立てています。大企業の場合には自社で分析機能を持っています。中には自社の食品分析機能を別の会社にして、他社からの食品分析委託を受けている会社もあります。一方で、自社で食品分析機能を持たない会社では食品分析業者に委託しているところもあります。食品分析ではいったいどのようなことがわかるのでしょうか?「関連サイト:株式会社キューサイ分析研究所:食品分析」
食品分析でわかること
食品分析で最も有名なのは栄養成分分析です。食材単品から複雑に加工された加工食品までその食品の栄養成分を分析します。また特別な有効成分の量なども分析できるので、その食品が持つ機能性の分析もできます。食品に含まれる可能性がある有害成分の分析もできます。
農薬や有害な微生物、アレルギー物質などの分析ができるので食品の安全性の確認に役立ちます。サプリメントや医薬品、化粧品の分析もできます。賞味期限や消費期限設定のための長期間繰り返し分析、観察が必要な検査も可能です。
食品分析機関では様々な食品の分析を委託されます。そのため、膨大なデータがあります。このようなデータを基にして食品の開発や研究の提案やサポートもします。
栄養成分分析
その食品がどんな栄養を含んでいるかで、食品の性質、見た目、味などが変わります。食品を開発するためには栄養分析は不可欠です。多くの食品会社では食品分析の専門業者に委託して栄養成分分析をします。また、日本の食品表示基準ではパッケージに栄養成分表示を義務付けています。
その項目は、エネルギー、たんぱく質、脂質、炭水化物、食塩相当量です。これはお惣菜やお菓子類でも食品である以上表示義務があります。今や自社製品の栄養成分分析は食品会社にはなくてはならないものになっています。
自社で食品を生産していない会社でも、食品を輸入して日本でパックして販売する会社も表示義務があるので、食品輸入会社も製造会社と同じように食品の栄養成分分析が必要になっています。また特に表示が義務付けられていない成分でも、自社でその栄養成分の含有量をうたう場合にも食品分析をして含有量を表示します。
たとえば、「リコピンが豊富に含まれています。」「DHAの量が多いです。」といって販売する場合には、実際にその食品に含まれるリコピンやDHAの含有量を分析します。近年はペットフードも有効成分を含んでいることや特定の栄養成分の含有量を宣伝して販売することもあります。
ペットフードに関しても栄養成分分析が必要になります。生産するときに加えた量が製品にそのまま含まれているわけではありません。製造工程中に何らかの理由で破壊されたり流れ出たりすることも考えられます。このことから、製品開発途中の栄養成分分析は製造工程を考える上にも役に立ちます。
食品の安全性の確認
食品の中に有害物質や有害微生物、食物アレルギーのアレルゲンなど食品の安全性の確認は食品製造者には不可欠なことです。一度でも事故が起きれば会社規模によっては経営さえも危ぶまれることになってしまいます。残留農薬の分析、O‐157やサルモネラ菌などの有害な微生物の有無の確認は非常に重要です。
また近年は食物アレルギーの事故も増えています。
アレルゲンの有無の確認は非常に大切なことです。特に輸入品を扱う食品会社の場合には、使用された農薬や添加物、油脂類、防腐剤の確認が不可欠です。また、畜産品や魚介類などでは抗生物質の分析も必要になります。
飼育や養殖の際の飼料に含まれた抗生物質が製品に含まれている可能性が高いからです。海外と日本では、使用が認められている農薬も添加物も油脂類も異なります。この検査を怠っては、知らないうちに違法な食品を販売することにもなりかねません。
こういった安全性の確認は食品に限らず、乳幼児が触るおもちゃや器具類、衛生用品、包装用材、建材などにも必要になります。
もちろん、ペットフードにも必要です。
食品の経時変化の観察と分析
日本の食品には賞味期限か消費期限の表示が義務付けられています。そういった期限の設定はメーカーにゆだねられています。メーカーとしてはできるだけ長い期限設定をしたいのが本音です。大手チェーンストアなどでは賞味期限の残日数が少ないものは仕入れないというところもあります。
賞味期限の残日数が少ないという理由で大幅値下げを迫られることもあります。だからと言って簡単な検査だけで長い期限を設定していては社会的な責任も果たせません。また大きな事故を起こす原因にもなります。食品会社にとって経時変化の観察と分析は不可欠なものです。
しかし、この分析と観察はとても手間がかかり難しいものです。例えば賞味期限を設定したいときの検査は、商品によっては何年もかかるものがあります。その間、定められた温度や湿度、日照などの環境を維持する必要が出てきます。
何度も何度も微生物の増え方を分析します。微生物が増えることで腐敗の程度が分かります。また変質状況の分析が必要になります。柔らかさがなくなったり逆に硬いものが柔らかくなってしまうこともあります。油脂類は酸化物が増えて有毒性が高くなります。
検査方法なども一定の方法で継続する必要があります。綿密なマニュアルと定められた機器が必要なのです。専門業者でなければ不可能な検査もたくさんあります。
研究開発の提案、サポート
食品分析の専門業者はあらゆる食品の分析を委託されます。そのため、膨大なデータを保管しています。ただ保管しているだけではなく、その分析センターの知識として蓄積されています。こういったデータや知識は食品、サプリメント、医薬品、ペットフードなどの商品開発に大きな役割を果たすことができます。
自社で難問だったことが食品分析業者のデータと知識を借りれば解決できることがあります。また商品開発の方向性自体も確認することができます。実際に商品開発を終えて食品分析業者に委託分析してみたら、狙っていた商品とは全く違う分析結果がでることもあります。
これでは、それまでの開発費や時間が無駄になってしまうことにもなりかねません。商品開発当初から食品分析業者のサポートを受けながら開発を進めると、こういった大きな失敗を事前に防ぐのに役立ちます。食品分析業者はさまざまな提案をすることもできます。
場合によっては生産ラインそのものの設計のサポートをすることも可能です。